変化する暮らしをイメージして
家族構成やライフスタイルは変化していくものです。今だけを考えて広さや部屋数を決めてしまうのではなく、将来の展望や予想外の変化までを考慮し、幅広い可能性を探っておくことが重要です。
僕は、依頼主に対して、現在の価値観やイメージだけではなく将来まで考えて計画を立てるようアドバイスしています。もちろん、依頼主がすべて考えるのは難しいでしょう。建築家は、一緒に考える良きパートナーであるべきだと考えます。
建築家から見た別荘建築における注意点
建築にあたる際に依頼主に対してアドバイスしている注意点をご紹介します。依頼主と一緒に建築について考え、一つの「作品」をつくりあげることが建築家の役割です。完成度を高めるためのアドバイスは欠かしません。
子供の成長・別荘の利用頻度
週末は家族で別荘に行って過ごしたい。そのような要望で設計したものの、子供の成長にしたがって別荘を利用しなくなってしまう――これは、実際に起こりうる例です。子供が小さいうちはイメージ通りに過ごせても、大きくなればライフスタイルは変化します。この場合、僕は個室にはこだわらず、広いリビングを中心とした設計をおすすめしています。
冬場における別荘利用
別荘と聞くと「避暑」のイメージが強くなりがちですが、せっかくの別荘を冬場に放置するのはメンテナンスの面から見てもおすすめできません。しかし、積雪地や寒冷地に別荘をつくった場合、積雪によってアクセスが困難になることも珍しくはありません。スキー目的で別荘を建てた場合は、毎朝の除雪作業は「日課」です。「自然との共生」も別荘の醍醐味ですが、まず事前に土地について調べることをおすすめしています。
部屋の数と広さ
別荘に友人などを招きたいと考えている依頼主は多いのですが、いったいどれくらいの人数が集まるのか、ということを考える必要があります。友人を別荘に宿泊させるのか、近くのホテルに泊まってもらうのか……それは設計にも深く関わるところです。見栄を張って広いリビングを設けても、普段使わなければムダになります。
付近の施設へのアクセス
近年、将来的に別荘での永住を希望する依頼主が増えてきました。しかし、いざ生活してみると「近所で買い物ができない」「坂道が多すぎる」「不便」という理由で別荘を手放す方も多いようです。別荘での「生活」を考えるなら、付近の施設へのアクセスは先に調べる必要があるでしょう。
維持管理・メンテナンス
寒冷地の場合、水道管の「水抜き」をしていないと水が凍結・膨張して、水道管が壊れてしまいます。その都度修理費を払っていては、大きなムダになります。また、別荘は普段は使われないことが多いものですが、放置すると耐久性が下がって傷みやすくなるもの。管理会社への定期管理の依頼や電気・ガス・水道の基本料金など、気をつけるべき点はたくさんあります。